Medical Scope
腎移植と妊娠,分娩(2)
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.395
発行日 1981年5月25日
Published Date 1981/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205855
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腎移植を受けた女性の妊娠,分娩についての問題点には,母体のことに関してのほかに,胎児についてのことも大切な点があります。まず,胎児の発育についてですが,これは現在の妊婦の状態が正常であれば,いくら,腎移植する前が腎不全であったからといっても,胎児の発育に関しては正常にいくようです。つまり,移植をうけた腎が正常に働いていれば,また,胎盤などに前置胎盤などの異常がない限り,合併症のない一般の妊婦と同じように胎児は発育していくと考えることができます。この点では,かえって慢性腎炎のままで,あるいは高血圧症のままで妊娠している人より,胎児の管理については問題点が少なく,やさしいかもしれません。
しかし,ここに大変大きな問題点が登場してきます。それは腎移植例の人たちが毎日のんでいる免疫抑制剤です。イムランという薬の名前をどこかできいたことはありませんか。このイムランという薬剤が今日では最も多く免疫抑制剤として腎移植例に使われています。腎移植をうけた人は,何らかの形で自分に移植された臓器,すなわち,移植腎との闘いをしていかなくてはならないのです。そのためにはどうしても,この免疫抑制剤を常用していなくてはならないことになります。イムランのほかに,副腎皮質ホルモンなども用いられますが,何といってもイムランの方が適しているとみえ,外科,泌尿器科の先生方はこの薬を使っておいでです。
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