Medical Scope
腎不全女性と妊娠・分娩
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.447
発行日 1986年5月25日
Published Date 1986/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206886
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先日,朝日新聞で慢性腎不全の女性が非常に多くの人工透析や輸血の結果,たいへん苦労して分娩して生児を得たといううれしい結果が,大きく報道されました。きっと,諸君もこの記事を読まれたことと思います。そこで,今月は腎不全女性と妊娠・分娩についての今日の診療上の進歩や問題点を考えてみようということになりました。まだ腎不全になっていない慢性腎炎の女性が,私達産科医を訪れ,"私は妊娠して分娩してもいいでしょうか"──と質問されたら,私達の答えは"妊娠・分娩に耐え得る腎機能をもっていれば,最近は医療も進歩しましたからOKですよ"──と,こうなります。その妊娠・分娩に耐え得る腎機能というのはGFR(糸球体濾過率),すなわち,クレアチニン・クリアランスで50ml/min以上あるということです。これ以上あれば今日では妊娠を許可しています。この基準は,"妊娠初期にこのくらいの腎機能があっても,妊娠後半期になって悪化し,ずっと落らてきたときには,途中で妊娠を中絶しなくてはならないこともありますよ"──という内容を含んでいることは忘れてはいけません。
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