Medical Scope
人工弁置換後の妊娠・分娩
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.552
発行日 1981年7月25日
Published Date 1981/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205881
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先日,腎移植後の妊娠・分娩についてのコメントをのせましたが,今月は心疾患のある女性で人工弁置換手術をうけたあとの妊娠・分娩についてのトピックをお話ししましょう。心疾患の外科的な治療法はずい分とめざましく進歩してきました。なかでも,人工弁置換術というのは弁膜症の人々をどのくらい救命したかわからないほどです。若い女性の心弁膜症例に人工弁置換術を行なうと,当然のことながら,やがて結婚し,妊娠するという問題がおこってきます。今までにも,数多くの心疾患例の妊娠・分娩についてのレポートがありましたが,このたび,「日本産科婦人科学会雑誌」に新潟大学の産科婦人科教室から,30例もの人工弁置換術後の妊娠例についての論文が発表されましたので,それを中心にして,人工弁置換術後の妊娠・分娩での問題点を考えてみました。
まず,人工弁置換術をうけたひとは血液が凝固して人工弁につかないように抗凝固剤を服用しています。皆さんもワーファリンなどという名前の薬剤を知っていることでしょう。この抗凝固剤は催奇形作用があるということでも有名なもので,主として中枢神経系の奇形を作る作用があるといわれています。今度の報告でも,抗凝固剤服用の14例中の3例に奇形が見つかっています。人工弁置換を行なった女性には,そうわかっていてもこれらの薬剤を服用していなければならないこともあるので,この点は今後の課題の最大のものになると思われます。
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