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特集 腎移植2023:最新の動向とトピックス
最新の動向
腎移植患者の妊娠・出産
Pregnancy complications and impact on kidney allograft after kidney transplantation
大木 里花子
1
,
海上 耕平
1
OKI Rikako
1
,
UNAGAMI Kohei
1
1東京女子医科大学移植管理科・腎臓内科
キーワード:
kidney transplantation
,
pregnancy
,
pregnancy complications
Keyword:
kidney transplantation
,
pregnancy
,
pregnancy complications
pp.755-759
発行日 2023年12月25日
Published Date 2023/12/25
DOI https://doi.org/10.24479/kd.0000001120
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はじめに
腎移植患者ではじめて妊娠に成功したのは当時23歳のエディス・ヘルムで,彼女は1956年に一卵性双生児の姉から腎臓を提供され,1958年に帝王切開で3,300gの健康な正期産男児を出産した1)。以降多くの腎移植患者が安全な妊娠・出産を経験している。わが国においても腎移植件数は年々増加しており,2019年に施行された腎移植施行件数ははじめて2,000例を超え2),さらに免疫抑制療法や移植後管理技術の向上により移植後長期生着症例も増加しており,妊娠・出産に至る腎移植患者も増加している。腎移植のメリットとして生存率の改善,生活の質の改善が挙げられるが,なかでも妊孕性の改善により妊娠・出産の可能性が高まることは,女性腎不全患者によって大きなメリットの1つである3)。また2021年には日本移植学会より「臓器移植後妊娠・出産ガイドライン2021」4)が上梓されるなど非常に注目を集める分野である。また,近年世界保健機関より「プレコンセプョンケア」の重要性の発信も行われている。プレコンセプョンケアとは「妊娠前の女性とカップルに医学的・行動学的・社会的な保健介入を行うこと」と定義される。移植後は免疫抑制薬などの薬剤服用,易感染性,移植臓器への障害,児への影響など多くの特殊状況が存在するため,腎移植患者については特にプレコンセプョンケアの意義が大きく,移植にかかわる医療者は理解しておく必要がある。
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