特集 生命誕生と医の倫理
愛の医
駒澤 勝
1
1国立岡山病院・小児医療センター
pp.50-54
発行日 1981年1月25日
Published Date 1981/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205804
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障害をもつ子の出生
助産婦さんたちにしてみると,お産は,生命の誕生やそれを喜ぶ母親の姿のすばらしさに感動する,さわやかでエキサイティングな一時であるだろうが,私は学生時代から産科学はどうも苦手であった。今でも産科をやらなくてよかったと思っている。何よりもお産に立ち合うこと自体が好きでない。貴婦人のあのお産の格好は,われわれ男性の夢を砕くし,人の声とも思えないような奇声も堪え難い。その上,お産を見ていると,今にも胎児が壊れて死にそうに思えて,ハラハラしてどうしても落ち着いていられなくなってしまう。
ともあれ,たいていの場合は,元気な赤ちゃんが生まれて,ハッピーエンドになるが,しかし,生まれて来る子が,皆の希望どおりでないことも少なくない。顔に,とても醜い母斑があったり,多発奇形があったり,男女の区別さえはっきりしないこともある。あるいは,仮死や頭蓋内出血のために重度の脳障害が予想されたり,先天性心疾患で哺育器の中で呼吸困難が続くこともあろう。実際には,もっと悲惨な例を経験された助席婦さんも多いことだろう。
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