保健行政スコープ
愛だけでは足りないが
橋爪 章
1
1厚生省保健医療局企画課
pp.374-375
発行日 1994年5月15日
Published Date 1994/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901043
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公衆衛生行政関係者の間では「地域保健法」(案)がトピックである.この新しい法体系による地域保健の行方はおおいに気になるところである.保健所の機能強化,マンパワーの確保・充実,保健・医療・福祉の連携,市町村の役割の重視が,サービス提供者側から見た本法案の目指す方向であるが,住民側からは,要するに,行政アクセスがより身近になるということである.それでは行政アクセスが身近になるとどんな良いことがあるのかといえば,一般的に,ニーズの多様化に対応したきめ細かな行政サービスが期待される,と唱えられている.
さて,行政を長くやっていると,ふと,そもそも行政とは何であるかの根源的な疑問が頭をかすめることがある.行政は,特に,個人の生活に深くかかわる公衆衛生行政は,人間生活への干渉行為であり,知らず知らずのうちに,本来侵してはならない領域にまで足を踏み入れているのではないだろうか.ひょっとして,行政は,その存在が感じられないほど希薄であるほうが良いことなのではないだろうか.行政アクセスが身近になるということは,もろ手をあげて歓迎してよいことなのであろうか.行政に求められている責務は,住民間に法の下の平等を担保するための均質化努力ではなかったろうか.
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