私と読書
真の愛による心の開放—「愛」を読んで
斉藤 益子
1
1宮崎県立宮崎病院
pp.200-201
発行日 1977年3月25日
Published Date 1977/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205185
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「愛」このことばを聞く時,私たちはどうとらえるだろう。「人類愛」「神の愛」として考えれば,それは気高く崇高に聞こえる。しかし,現在の社会においては,「愛さえあれば………」とか,「愛する」ということばを使いすぎるような気がする。それで,「愛」ということばが低俗で薄っぺらなイメージでとらえられる時が多くなった。そんな中で,「真の『愛』とは何か」ということが,「愛」を考える時おのずとでてくる問題となってきた。
ミシュレ著の「愛」は,この「真の愛とは何かということを考えさせてくれる書である。内容を紹介すると,上・下巻と分かれており,それぞれに青春・結婚,誘惑・病い,と副題がついているが,著者が諸言の冒頭で──本書の目的,意味,およびその内容の及ぶ範囲を,十分に表現しうるような題をつけるとすれば,《真の愛による人間の心の開放》とでもすべきであろうか──と述べているように,人間の日常生活の中での愛の姿,愛のあり方を夫婦を中心にした「男と女のかかわり方」という視点で書かれている。緒言で愛の問題が人間社会の基本的土台になっていること,「社会」は「家庭」に支えられ,家庭は「愛」に支えられる,つまり愛がすべてに先行する,と述べている。第一書〈愛の対象を創造すること〉では,彼は愛の能動者は男性で女性は受動者であるとし,「──女の幸せは服従であり,女性は愛をもって積極的に服従する。
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