連載 二人三脚の闘病記・5
愛
我妻 令子
pp.502-505
発行日 1987年5月1日
Published Date 1987/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921721
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「て・あ・て」
術後に私のできることは,熱いタオルをナース・ステーションからもらい,傷口に温湿布をし続けるようなささいなことでした.これは効果があったようです.足首を私が握り,上下に動かすようなこともよくしました.臥床を続けていると,足が一番早く萎えていくようです.足の踏ん張りは生命力の踏ん張りにも通ずるように思えたのです.ふくらはぎをマッサージするのも具合がよかったようです.温湿布のほかに指圧も試みました.洋の身体には大きな傷跡があります.傷の痛みと,臥床という一定の姿勢を強いられることで,身体中のあちこちが凝り固まっているに違いありません.医者はやはり治療者ではあってもcare giverではないようです.
「まだ当分痛いでしょうが,徐々に痛みは消えていきます.非常に順調です」という言葉を残して部屋を出ていかれました.ある日,看護婦さんが足にエキホス湿布のようなものを貼ってくれた,と洋がうれしそうに言いました.このようなちょっとした労りの心が,病人の心の重みをどんなにか軽くしてくれることでしょう.
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