私と読書
実践の場で必要な知識が具体的に—「妊婦タブー集」を読んで
岡崎 美知子
1
1北海道大学医学部付属病院
pp.689-690
発行日 1976年11月25日
Published Date 1976/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611205133
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最近は,子どもが早くできすぎて残念だとか,損をしたなどと,妊娠や出産について安易な考え方をする人たちがふえてきたように思う。そして勝手なもので,いよいよ子どもが生まれるとなると「どうか頭のよい,素直な子であってほしい」,「楽なお産をしたい」などと,五体満足でしかもよい子を,と願う。しかし,いくら親が望んだところで,物質的な豊かさや,めぐまれた環境だけではよい子を授かるための十分な条件とはいえない。そのためには,妊娠や分娩に対しての正しい知識を身につけ,母親としての自覚をもつことや,心の準備が大切である。
わが国においても,母子保健管理の整備にともない,新生児・乳幼児死亡が改善されてきたといわれても,やはり国際的にはかなりの遅れがあることも事実で,3時間待ちの3分間診察の現在,私たち助産婦は保健指導のあり方を,今一度検討する必要があるように思う。さらに,地域差や月別配慮も十分にして,単に生理現象とか,物的に考えるのではなく,妊娠するとなぜ栄養が必要なのか,なぜ無理をしてはいけないのかを,家族ぐるみで理解してもらえるよう心がけたいと思う。
赤ちゃんの心と体は,オギャーと生まれたときに作られるものではなく,母胎の中ですでに育まれ,とくに人間の一生を左右する性格は,母親の妊娠中の心づかいが大きく影響することは医学・心理学上においても証明されている。
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