連載 私と読書
"生きる権利"への新たな感動—「母よ嘆くなかれ」を読んで
末原 紀美代
1
1大阪大学医学部付属助産婦学校
pp.66
発行日 1973年12月25日
Published Date 1973/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204626
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看護の仕事にたずさわって早や5年,それも人間誕生の瞬間をその家族とともに大いなる歓喜と希望でいつも迎えることができましたらどんなにか幸福で励みになることでしょう。分娩台に一つの新しい生命が産み落され,その小さな生命からの元気強い啼泣と,「五体満足ですよ。」という私たち助産婦の言葉を産婦はどんなにか待ち,また私たちも分娩に望んでいる産婦を前に,「どうぞ,生まれてくる赤ちゃんは元気で五体満足でありますように。」と心の中で祈らずにはおられません。
しかし,この新しい人間誕生で少なくとも数人の何らかの不幸な運命(死産・未熟児・奇形児・その他の欠陥)を背おっての誕生に遭遇しなければなりません。その悲しみにひたることなく,次にしなければならない母親への慰め,勇気づけ,この時ほど助産婦の仕事のむなしさを感じる時はないでしょう。
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