連載 続・おんなの視座
反結婚論—エロスを希求するなら
舟本 恵美
1
1女・エロス編集委員会
pp.65
発行日 1973年12月25日
Published Date 1973/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204625
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灰色の冴えない石ころ。幹に空洞をもった枯れかかっている古木,砂浜に打ちあげられて乾燥してしまった海星(ひとで)。
婚姻制度はわたしにはこんなイメージで表現されるし,インフレの消費生活に伴なって,ブライダル産業はあらゆるメディアを駆使して"結婚"に迫ってきており,それはまた潤滑油としての官制のモラルをも内包しているのが,現実なのだ。結婚をいかに抽象的に愛を旗印にして規定しようとも,具象的にいってみれば,今夜からこの男と女が床をともにし,日常生活を送り,夫婦であると思い込みます,と宣言することであり,しかも民法にのっとり市役所の戸籍課に届けの紙を出すこと,にすぎないのだ。同じ姓を名のることによって,一心同体であるとする錯覚と,人前に自分たちの性を日々さらそうとする無粋な暴露趣味。これが結婚式でなくてなんだろう。
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