特集 がん患者に寄り添うコミュニケーション ~事例で学ぶ患者とのかかわりかた~
Ⅱ.コミュニケーションの実際 ~事例編~
嘆く患者① 術後再発のためのがん薬物療法の継続に意味が見いだせなくなり,嘆く乳がん患者
堀 孔美恵
1
1東邦大学医療センター大橋病院看護部/がん看護専門看護師
pp.138-141
発行日 2021年2月15日
Published Date 2021/2/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango26_138
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
❁ 事例紹介
Iさん,50代後半,女性.
16年前に他院で左乳がんStageⅡAと診断され部分切除.術後放射線療法,CMF療法が施行され,経過観察目的の定期受診をしていた.5年前にIさんは長女に対する夫の高圧的な態度から子どもを守るため別居.転居とともに定期受診を自己中断した.2年前に左乳房のしこりに気づき再発が疑われ当院に紹介受診された.その結果,左乳房内再発であり左乳房切除術を施行.トリプルネガティブ(ホルモン受容体,HER2ともに陰性)乳がんの診断であった.
Iさんは細胞障害性抗がん薬を継続的に使用する方針となった.筆者の面談までの2年間,EC療法,ドセタキセル,カペシタビンに変更するが左鎖骨リンパ節転移,XC療法にしたが左頸部リンパ節へ転移があり,4回に及ぶレジメン変更がされていた.5回目のレジメン変更となるW-PTX+BVが導入されてから倦怠感と悪心,口内炎が強く出現すると「この治療はいつまで続くの」と訴えるようになった.化学療法室の看護師は,その度に傾聴し対処療法を説明したが同じ訴えを繰り返すことに困り,筆者に相談があった.
患者は長男と同居,キーパーソンは長女だが結婚し他県に在住.姑の世話と持病もあるため負担をかけたくないと連絡を控えていた.
© Nankodo Co., Ltd., 2021