Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
パール・バックの『母よ嘆くなかれ』―中国文化と障害受容
高橋 正雄
1
1東京大学医学部精神衛生・看護学教室
pp.165
発行日 1994年2月10日
Published Date 1994/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107556
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『母よ嘆くなかれ』(伊藤隆二訳,法政大学出版局)は,パール・バックが「知能の面で,幼児の水準以上には発育が困難」な娘を自ら養育した体験を綴った真に感動的な本である.その素晴らしさは直接読んで頂くほかないが,比較文化的な観点から興味深いのは,この中で紹介されている中国人の障害者観である.
パール・バックは,辛亥革命直後の中国滞在中に娘の精神遅滞を知るのだが,彼女はその事実を知った時にも「恥ずかしいと思う気持ち」はなかったと言う.そして彼女はその理由を,「人のどんな欠点でも,ありのままに受けいれる中国人の中で成長してきたから」だと語るのである.「中国で暮らしている間に,目の見えない人も,足の不自由な人も,耳が聞こえないために話せない人も,また身体の形がととのっていない人も見たのですが,どの人も,みんなと同じようにふつうに生活していたし,またなんのこだわりもなく,だれからも受けいれられていました」.
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