特集 がん患者に寄り添うコミュニケーション ~事例で学ぶ患者とのかかわりかた~
Ⅱ.コミュニケーションの実際 ~事例編~
嘆く患者② 生存率が低いことを告知されて嘆く,膵臓がん手術後の患者
松本 好美
1
1群馬県立がんセンターがん相談支援センター/がん看護専門看護師
pp.142-145
発行日 2021年2月15日
Published Date 2021/2/15
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango26_142
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❁ 事例紹介
Jさん,30代半ば,女性.
心窩部痛を訴えて近医を受診したところ膵臓に異常を認め紹介されてきた.精査の結果,膵臓がんステージⅡBと診断され手術のために入院した.
会社勤務の夫と幼稚園に通う子どもの3人家族で,近くに住む患者の両親の自営業を手伝っていた.
膵臓がんの手術後,膵液瘻を形成してしまい,なかなかドレーンが抜けなかったものの経過は順調で遠隔転移もないということで退院する日を楽しみにしていた.
看護師が病室の前を通りかかると深刻な顔で夫と話をしているのが見えた.いつにない硬い顔つきだったので「どうされました?」と声をかけたが,夫から「なんでもないです.大丈夫です」と返答があった.患者もうなずいていた.患者の表情が気になったが夫の前では話せないことかもしれないと思い,患者が一人で病室にいるときに,看護師から「なにか心配事ですか?」と声をかけた.
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