連載 ほん
明治文学への誘い―近代文学史・明治の文学—紅野敏郎・三好行雄・竹盛天雄・平岡敏夫編
塩原 経央
pp.56
発行日 1972年4月1日
Published Date 1972/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204356
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夏目漱石の「吾輩は猫である」や「坊ちゃん」はもとより,島崎藤村の詩歌,石川啄木の短歌などは,いまなお新鮮な魅力をもって多くの人々に読まれている。少し年齢を重ねた者なら尾崎紅葉の「金色夜叉」や徳富蘆花の「不如帰」など,楽しく読んだこともあるだろう。あるいはたとえば反戦文学ひとつとりあげても,現代の晦渋を極める作品よりも与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」の切々とした詩情のほうにある種の輝きを感じるむきもあるかもしれない。
これらはすべて明治の文学である。長い鎖国時代の闇のトンネルをぬけた曙光のなかで,明治の青年たちはさまざまな形で多感な心の結晶を私たちに文化遺産として残した。
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