婦人の目
子どもと性
山主 敏子
pp.62
発行日 1970年3月1日
Published Date 1970/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203902
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数週間の病床生活でつれづれのままに赤毛のアンシリーズのまだ読んでいなかった数冊を読み,そこに描かれている少年少女像の,いかに清らかに美しいかということに,改ためて感嘆した.作者のモンゴメリが第10冊目の"アンの娘リラ"を書いたのは第1次大戦のころである.つまりいまから半世紀以上も前ということになるが,ちょうどわが国では吉屋信子,吉田紘二郎といった作家たちの純情小説が,少女たちの涙をしぼらせた時代であった.
ところが星よスミレよは全くいまやむかしとなり,現代の日本の少女小説はセックスがいっぱいだといわれている.昔の少女小説のおもなテーマは同性間の友情であったが,男女共学の現代では,興味の対象はもっぱら異性となり,それも淡い慕情といった程度のものではなく,一直線にセックスそのものにとびこんでいる.大学生と高校生が,宿屋で一夜をすごすなどはありふれた話で,強烈な刺激を追求するのあまり,近親相姦にまでおよんでいる.そして少女雑誌にも堂々と避妊薬のコーナーまで登場している.こうして興味をかき立てられた結果が,中学生の桃色遊戯となり,中絶のため友人のあいだでカンパを集め,堂々とみんなで医者を訪れるというにいたっては,なにおかいわんやである.
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