婦人ジャーナル
性教育と子どもの読みもの
山主 敏子
pp.53
発行日 1971年6月1日
Published Date 1971/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204155
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このごろのお母さんたちの大きな悩みのひとつは性教育であろう。"ぼくどこから生まれたの?"とか"どうして赤ちゃんは生まれるの?"とかいう傾向にぶつかって,さてどうしたものかと困っているお母さんは多い。もう昔のように,コウノトリが連れてきたのよなどというごまかしでは満足してくれないからであろう。といってもこういう種類の子どもの質問は,おとなが思案するほど深刻なものではない。ある程度適当な抽象的な表現による答えで,結構子どもは納得してくれるものなのだ。あまり幼時から性教育とさわぎ立てる行き過ぎにも問題があるのではないか。
現代のような情報過多の時代には,子どもの耳にも意外に早く性知識が,ゆがんだ形ではいっていくことが予想される。性というものを人生の尊厳な事実として見ないで,単なる興味や好奇心だけで見るようになるならばそれは恐ろしいことである。お母さんたちは性そのものを子どもにどう教えようかと考える前に子どもの性についての考え方を正しい方向へ導いていくことが必要である。具体的には,子どもの読みものによって,両性間の愛情の問題を,清らかに美しいものとして印象づけ,愛についての考え方を定着させていくことである。
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