わたしの分娩
苦しみの後のさわやかな喜び
中村 明子
1
1国立予防衛生研究所細菌第一部
pp.42-43
発行日 1965年9月1日
Published Date 1965/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203042
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その日は定期検診日だった.胎動は相変らず活発だし,別に異常も感じなかった.けれど予定日を2日後に控えているし,前の診察から10日経っているので,いつものように電車とバスを乗り継いで40分ほどかかるM日赤病院へ出かけた.「3月25日から27日まで産婦人科学会のため当日の診察はできるだけ見合わせてください」と張り紙がしてある.そのためか学会前前日のその日は血圧測定室の前にも,尿検査室の前にも見事なお腹の妊婦さんたちが長蛇の列を作っていた.私の出産予定日は3月25日,まさに学会初日に当たっている.初産は予定日より遅れがちだと読んだり聞いたりしていたので気にもとめなかったのだが,検尿のために尿を採った際少量の出血をみたときは,お産も近いんだという実感が湧いてきてさすがに胸がどきどきしてしまった.
内診の結果子宮口開大2cmとのこと,痛みが規則的になったら入院するようにと指示されて帰宅した.家に帰ってからはいつでも入院できるようにと入院用の荷物を点検したり,退院の時に必要な産着類をまとめたり,そわそわと半日を過ごしてしまった.しかし痛みの起こる気配のないまま翌24日も過ぎてしまった.お産にかんする唯一の手引書である婦人雑誌の付録を何度も開いては「お産のはじまり」の項を読み返えしたものだ.
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