インターホン
妊婦診察室の片すみから
伊藤 セツ子
1
1東大医学部付属病院
pp.45
発行日 1965年9月1日
Published Date 1965/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203043
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午前8時半,狭い妊婦診察室に入りひとまわり見渡す.診察,検査の準備,昨日の記録の点検をし,片すみのカーネーションの水を換えながら今日も思う.妊婦さんがそろそろ見える頃,胎教に,などとリキまなくとも,快い音楽は誰にもよいからと,数多くないレコードの中から子守歌をかける.待っている時間に少しでも読んでもらえればと,摂生事項,食事に関することなどのパンフレットを用意する.さて,それからが大変である.短時間の間に妊婦,褥婦の診察を行なう。ゆっくり時間をかけて診察できたらナ,などと思ってはみるものの,午後の診療はまた医師,助産婦を待っている.教育研究機関である大学病院の特殊性などもあり,諸々のことが煩雑すぎ,しなければならぬことの何と多いことか!都会の真中ゆえ,時間的にも経済的にも比較的恵まれた妊婦さんが多く,非妊時から入院予約をしなければ入れないなどの冗談の出るぐらい.妊娠初期より入院予約し,妊娠各月,分娩,産褥期までと,一連の継続観察,保健指導はされているが,しかし少ない時間の中での診察,指導により,妊婦自身の日常生活の中で,妊婦に必要な最低限の知識態度をどのぐらい持たせ,自から実践させ,また意欲を持たせ続けられるだろうか.
妊娠中はむろん,退院後の保健指導を撤底させるためにも横の連絡を密にし,施設内より施設外に移っても十分健康管理ができうるようにするためにはどうしたらよいか.
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