学会だより 第26回日本学校保健学会
人間形成に学校保健はいかに関与していくべきか
武田 真太郎
1
1和歌山県立医大衛生学
pp.296-297
発行日 1980年4月15日
Published Date 1980/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206075
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■はじめに
近時,全国的に子どもたちの体力・気力の低下が問題となり,一方では,子どもの自殺の増加,学校内外の暴力事件や少女売春などの非行行動の若年化が目立つ.
都会の子どもの生活は,路地の遊び場を侵入する自動車に奪われ,近所の空地は資材置き場になっていて危険だから,神社の境内は誘拐されるといけないから,と親や学校が遊ぶことを許さない.やむなく狭い自宅に閉じこもり,テレビの画面にみずからを埋没させて,山野を駆けたい欲求を満たす.これに比べると,はるかに多くの遊び場が残っている農山村でも,子どもに課せられていた農作業の手伝いが,作業の機械化とともに足手まといの邪魔なものとして敬遠され,怪我でもされるとかえって困るので,自宅で留守番をさせられる羽目になる.こうして,子どもたちの自発的行動の発露である「遊び」を知らない子どもたちが誕生した.冒頭に挙げた現代っ子の問題の背景には,「生活様式のアーバニズム」の浸透によってもたらされた生活の変貌が複雑にからみあっているのであろうが,1つの共通した要因として,この遊びを知らない子どもたちにみられる「人間としての発育・発達」の阻害が憂慮されている.
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