講座 分娩に関する諸診断法・3
胎児生死の診断
久保 博
1
1国立東京第二病院産婦人科
pp.24-27
発行日 1954年12月1日
Published Date 1954/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200748
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胎兒生死の診断は妊娠時期により比較約容易に判定し得る場合もあるが,数回の診察,数週の経過を観察し且時には生物学約検査も併せ行い始めて確診し得るような場合も少くない.一般に胎兒が死亡すれば特別な場合を除いては多くは自然に排出され,母体の危険を招来することは殆んど無いが,一面には母体に重篤なる合併症がありその適応処置の決定に際して胎兒生死が重要な役割を演ずる場合も稀ではなく又実地上生死をすみやかに確診することは極めて必要なことである.
吾々が胎兒の生死を判定するには胎兒の生存徴候,死亡の徴候等,自覚的或いは他覚的に現われる臨床的の症状を詳細に観察し,時に生物学的,レントゲン的,或いは生理学的に種々の検査を行い決定するのであるが診断の順序としてまず既往病歴より原囚となるべきものの有無をあらかじめ知ることは診断にあたり有力なる助けとなるものであるからゆるがせにしてはならない.原因をなす疾患としては梅毒,重症糖尿病,慢性腎炎,母体及び胎兒を害する全身約重篤なる疾患,強烈なる外来刺戟及び損傷,等に就いては特に留意せねばならない.かくして既往の病歴現在の症状を詳細に検し,他覚的診察,諸種の検査を行いこれ等を綜合して判定するものであるが,ただに一回の診察によつて確診し得ることはむしろ少く,数回の診察,数週の経過を観察して,はじめて判定し得る場合が少くないことを知らねばならない.以下各妊娠時期につきこれら判定の基準となるべきことにつき述べる.
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