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2003年にヒトゲノム計画が完了し,ヒトの遺伝子の数が約20000-25000とショウジョウバエと大差がなく,極めて少ないことが判明した1)。したがって,ヒトが有する思考能力や感情といった高度な脳機能はもはや単純に遺伝子の多寡では説明できなくなった。一方,蛋白質の設計図である遺伝子以外の非コード領域(non-protein-coding領域)にその秘密が隠されていることが明らかになってきた。つまり,ヒトでは蛋白をコードする領域であるexonがゲノムのわずか1.2%程度であるのに対してnon-protein-coding領域はゲノムの約98%にも及ぶ。この領域は生物が進化するにつれ増加しており,この領域から大量の転写産物(poly A+RNA)が見つかった。そして,この領域から転写されるRNAは蛋白をコードしないRNA,non-protein-coding RNA(ncRNA)と名付けられた。その中で多くは21-25ヌクレオチドのマイクロRNA(microRNA)であった。現在,ヒトがもつ高度な生命現象や機能はむしろ,このmicroRNAが担っているのではないかと考えられている。
microRNA(miRNA)はヒトやショウジョウバエのみならず,植物や線虫など広く生物界に存在する。miRNAはゲノムより蛋白をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)と同様,RNAポリメラーゼⅡによって転写される。その後,この一次miRNAは核内のDroshaにより前駆体miRNAとなり細胞質に移送される。その後,DicerといったRNase Ⅲ酵素によりプロセシングを受け成熟型miRNAになり,ついには1本鎖アンチセンスがガイド鎖miRNAとなってRNA-induced silencing complex(RISC)という蛋白複合体と結合し,標的となるmRNAの3’非翻訳領域に相補性をもって結合する(図1)。miRNAは標的となるmRNAの翻訳を抑制し,遺伝子の発現量を調節していることがわかってきた。このRNA干渉効果はmiRNAと標的となるmRNAの相補性の一致率に依存し,相補性が高いほどより強く翻訳を抑制するとされている。
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