ジェネラリストに必要な ご遺体の診断学・3
生死を分ける「死亡時刻」
森田 沙斗武
1
1大阪はびきの医療センター 臨床法制研究室
pp.720-724
発行日 2023年6月15日
Published Date 2023/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429204336
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Case
患者:75歳、男性。妻と2人暮らし。近隣に長女が住んでおり、日常生活の手助けをしている。遠方に長男が在住するも、関係は疎遠であった。
既往歴:高血圧症、2型糖尿病
病歴:長引く咳と胸痛を主訴に受診し、肺腺がん・がん性胸膜炎と診断。2年間にわたり、化学療法や脳転移に対する放射線療法などを繰り返したが、PS(performance status)4となり、緩和ケアの方針となった。通院にて緩和ケアを行いながら自宅療養をしていたが、呼吸困難感が増強したため、看取り目的にて緊急入院となった。
意識状態が悪く血圧も低下していたため、家族に集まるように説明を行った。家族が長男に連絡したところ、遠方から向かうため時間がかかるが、看取りには立ち会いたいので、その間は心臓マッサージをしていてほしいと申し出があった。
入院2日目の午後3時35分に、心電図モニターにて心停止を確認した。長男の来院は翌朝とのことだったので、居合わせた遺族の了承のもと死亡確認をしようとしたが、長男から待ってほしいと連絡があった。翌朝までの心臓マッサージは不可能であることは納得していただいたが、死亡確認は長男を待つこととなった。
翌朝7時15分に、長男の到着を待って死亡確認。主治医は、死亡時刻を「入院3日目の午前7時15分」としたが、遺族の都合で死亡時刻が変化することに釈然としなかった。
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