講座
放射能の話
宮川 正
1
1横浜医科大学
pp.24-27
発行日 1954年8月1日
Published Date 1954/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200664
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最近ビキニの灰事件以来放射能についての関心が非常に高まつている,というよりむしろ放射能に対する恐怖心というべきであろう.このなかには必要以上の恐怖もあれば,又当然注意して何等かの対策を講じなくてはならないものもあるわけである.医療に從うものとしてこの放射能の一通りの概念を知り,これに対する心構えをつくつておくことは必要であると思う.
放射能(性)物質特に人工放射性同位元素とは--放射能物質の代表的のものとして誰でも知つているのはラジウムである.いうまでもなくラジウムの如く原子核崩壞を行つてα線β線γ線等の放射線を出す物質を放射能(性)物質という.天然にはラジウムの属するウランラジウム系列の外にアクチニウム系列,トリウム系列,ネプタニウム系列があり,これらは一般に知られているが,あまり知られていない天然放射性元素がある.例えば加里(K)の中に放射線(β線,γ線)を出すK40なるものがある.吾々人体には加里が含まれているから,僅かではあるが生れながらにして吾々は放射性物質を体内に持つていることになる(K40は全体のKの0.011%であるから安心).その他にもRbS7Sm152Lu176等がある.(註.元素符号の右上の数字はその原子核内の陽子数+中性子数=原子量.左下の数字は陽子数=原子番号である.
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