講座
過熟兒の分娩に就いて
糸井 一良
1
1聖路加国際病院産婦人科
pp.28-30
発行日 1954年8月1日
Published Date 1954/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200665
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
過熟兒の定義なるものを読んでみると「発育が特に良く,形態には何等異常のないものをいう」と書いてある.然し発育の良いということは単に体重が重いというだけでなく,体重や身長は勿論のこと,頭部の大さ,縫合並びに骨の硬さ,筋肉並に関節の硬さ,或は皮下脂肪の沈着等総べての点が成熟兒に比較して著しく良好でなければならない.これが過熟兒の特徴であり,且又分娩障害を起す源となるのである.
体重は大きくても在胎日数の少ないものは生活力が弱いし,これに反して体重は少なくても在胎日数の多いものは丈夫であることは一般に認められている.然らば在胎日数の長いものは総べて過熟兒であるかというに,これは必ずしも然らずといわなければならない.例えば分娩予定日を過ぎる事1カ月にして尚平均体重に達しない新産兒をみることは既に諸姉が屡々経験きれていることと思う.これは受胎日のあきらかでないためでもあるし,又月経周期を考慮に入れずに,最終月経だけで予定日を算定した場合があるからである.然しなから一般に於て胎兒の発育程度は在胎日数に比例して大きくなるのが普通であつて,統計によると過熟兒の3/4は晩期産であることも事実であるから,在胎日数の超過ということか過熱兒の分娩に大きな役割をもつものである.従つて過熟兒の分娩を取扱う際には胎兒の大きさをしらべる回時に胎在日数の雙方を念頭に於て判断する必要がある.
Copyright © 1954, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.