Japanese
English
論述
放射能と神経系
Radiation and Nervous System
佐藤 誠
1,2
Makoto Sato
1,2
1岩手医科大学第一生理学教室
2Division of Neurosurgery, Univ.of Oregon Med.Sch.
11st Department of Physiology, Iwate Medical College
pp.33-44
発行日 1964年2月15日
Published Date 1964/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902566
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Ⅰ.緒言
広島や長崎における"世紀の実験"の結果,人類は放射能の生体に及ぼす予想外の影響に恐怖した。爾来,放射能生物学の研究の重要性が再認識され,国家的にその研究を推進させる様になつた。放射能生物学と言う学問は,古くより主として遺伝学や発生学の一部として,特異な研究がなされて来たが,戦後,時代の要求と,更に性能の良い高エネルギー放射能発生装置,精密測器などの発達につれて,画期的進歩を遂げつつある。その一部門として約5年前から米国で"放射能の神経系に及ぼす影響"という研究者のグループが生れた。これは組織学者,病理学者,生理学者,生化学者,実験心理学者,放射能生物学者及び放射線医学者よりなる。この新しい分野で,どの様な事が研究され,どの程度迄進んで来たかを綜括的に述べてみる。ただし,ここでは,機能的変化に重点をおき,幼若神経系の胎生学的研究1)2)3)4)5)及び放射能の臨床的応用6)7)8)9)10)は割愛する。
放射能の質,量,及び照射勾配:我々の取扱う放射能は,α素粒子(プロトン,ニュートロン),β線(エレクトロン),γ線(電磁波,X線)等のいわゆるイオン化性放射能と呼ばれるものである。放射エネルギーが媒質に吸収される時,その吸収物質を直接間接にイオン化せしめ,不安定な諸種のfree radicalが瞬間的に起り,これ等が媒質中に共存している溶質と連鎖反応を起して行く。この性質は放射能の質によつて多少異なる。
Copyright © 1964, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.