講座
自然流産の原因と予防
水野 潤二
1
1名古屋市立大学
pp.28-34
発行日 1952年8月1日
Published Date 1952/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200160
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近来人工妊娠中絶があたかも一世を風靡している為に,自然流産に対する一般の関心はうすれているかのように思えるが,実は必ずしもそうではない。否寧ろ人工中絶や受胎調節が普及すればする程,期待のかけられた妊娠が中絶するようなことのないようにとの念願は従来より一層深まる道理である。人工中絶を望む妊婦は医師を訪れる筈であるから,助産婦諸姉を訪れる妊婦の多くは,その妊娠の成就を希望しているものと見てよいであろう。従つて諸姉は人工中絶や受胎調節の普及する反面には,諸姉を訪れる妊婦の妊娠を全うさせる為の使命がより重大さを加えることを悟られて,よりよき指導者となるよう努力されることも肝要と思われる。このような意味から自然流産の原因と予防という問題をとりあげ,諸姉の参考に供することとした次第である。
さて本題に入る譯であるが,その前に尚一寸明かにしておかねばならぬ事がある。その一つは流産という語の定義であつて,広い意味では産兒が母体外生存の可能となる28週末以前の中絶を言うが,狹い意味では胎盤完成を見る16週末以前の中絶をいい,この場合には17〜28週の中絶を失産又は未熟産と呼ぶことは既に御承知の通りである。そこで本篇では流産を広義に解し,特に狹義の流産に対しては初期流産と呼称することとする。次にもう一つふれておき度いことは自然流産の頻度である。
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