今月の臨床 流産
流産の動向
2.自然流産は増えているか
福岡 秀興
1
Hideoki Fukuoka
1
1東京大学医学部母子保健学
pp.13-15
発行日 1993年1月10日
Published Date 1993/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901135
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流産の臨床統計
医学の進歩に伴い胎外生活の可能性が増し,流産の定義は大きく変遷してきている。一般に自然流産率(%)は10〜15と言われている。北大産婦人科1)では1978年〜1980年:12.57,1987年〜1991年:6.3,と減少傾向を示しているのに対し,慶應大産婦人科2)では,1979年:11.85,1983年:16.05,1986年:19.29と上昇傾向にあった。この差は流産の診断が妊婦と医師の双方の観察精度によりかなり左右されるものであり,加えて受診対象者の違いその他の因子が複雑に絡みあっていることに由来するものと思われる。このように流産の定義は変化していることに加え,多くの施設間の臨床統計には一定の傾向を見いだすことはできなかった。
流産は,臨床的に流産と診断されるclinicalabortionと,症状なくhCGの経時的な変化をみることによってのみ流産と診断されるsubclini—cal abortionまたはunrecognized abortionとに分けられる。後者は妊娠のごく早期より高頻度に起こっていることが判明してきた。AT Hertigは着床前後のヒト胚の分析を行って,ヒト妊卵の予後を以下のごとくに想定3)している。
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