お産の習俗
中國のお産
矢内原 啓太郞
pp.42-45
発行日 1952年8月1日
Published Date 1952/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200163
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中華人民共和国(中共)は地域も広大であり住む民族も多樣である。通常漢族満洲族,豪古族,「トルコ」族及び西蔵族に五大別するがこの他に苗,猺,白夷,民家,〓〓,西蕃,摩些,玀々,阿娼等の種類があり「ユダヤ」系や「タジック」系のものさえある。このうち漢族数に於て最も多く又文化の程度も他に比して高く現在国の中堅であるが地方により又階級によつて風俗,習慣を異にし言語さえ互に不通のものさえある。その体格も一般に麦を常食する北方人は大きく米を常食する南方人は小さい又女には纏足の習慣が数100年来あり数10年前から禁止されたとは云うものの今尚跡を絶たない。之は少女が1112才になつた時から足の母指を残して他の指を足の裏に折り込むように曲げ強く布で巻きしめて足を小さくするものでそのため纒足の婦人は踵で立ち膝を曲げないで主として股関節を動かして歩むようになり上体を伸して姿勢よく下腿よりも大腿の筋肉が発達する。骨盤にも多少の変化を認めるが著しいものでなくそのため特に分娩障碍を起したりする程ではない。因にこの纏足の由来は恐らく婦人の自由を束縛した封建時代の遺風であろうがその継続されておる理由の主たる原因は男子の「好み」と女子の無自覚によるものであろう。男女共に素足を決して他人に見せない。女子が纏足の包布を解くのは結婚後夫の面前のみに限るものとされておる。
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