明日への展開--ヒューマンバイオロジーの視点から 生殖免疫
原因不明習慣流産の免疫療法
八神 喜昭
1
,
青木 耕治
1
Yoshiaki Yagami
1
,
Kohji Aoki
1
1名古屋市立大学医学部産科婦人科学教室
pp.647-652
発行日 1984年8月10日
Published Date 1984/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207039
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流産とは正常妊娠維持機構の病的破綻現象であり,産科学的に非常に重要なものである。臨床的には約15%の人が妊娠初期に流産してしまうとされている1)が,最近の報告では,妊娠診断技術の進歩に伴い,妊娠ごく初期の人(受精卵の着床時期前後で本人は妊娠に気づかない時期の人)も含めると,そのうちの60%以上の人が流産しているとの報告もある2)。このように流産は非常にありふれた疾患であるが,その病因の約半数は胎芽の偶然的染色体分裂異常によるものらしい3)。しかし反復する連続した自然流産(習慣流産)においては,そのような偶然的な胎芽染色体分裂異常はほとんど原因に成り得ないと推察される。
これ以外に夫婦の染色体異常(転座保因者など),赤血球型不適合妊娠(D.E.Lewis,P.M.N.),母体の内分泌学的異常,子宮器質的異常,膠原病などが習慣流産の原因に成り得るが,実際には,これ以外のいわゆる原因不明な習慣流産が半数以上を占めている。そこで本稿では,近年の急速な発展を遂げた免疫学により,次第に解明されつつある原因不明習慣流産の免疫学的原因,及びその免疫療法について概述することとするが,この点については未だ数多くの問題点があり,充分に確立されたものでないため,今後の研究に待つところが多いことをお断りしておく。
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