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編集後記
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pp.1252
発行日 2024年11月10日
Published Date 2024/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552203275
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2024年の文芸の大きなニュースといえば,ガルシア=マルケス「百年の孤独」が新潮文庫から再登場したことでしょうか.10年ぶりに再読したところ,初読の際には登場人物の“現実にはあり得ない”破天荒さとして楽しんだエピソードの数々が,妙にリアリティのある痛みとして心に迫ってくることに驚きました.マコンドに生きる人々の闘争や愛,家族運営etc.のおそらくすべてが(よくも悪くも)身体的重荷を背景としたものであり,作者の代名詞でもある“マジックリアリズム”はまさに人間の生身の感覚に根差したものであったと認識を新たにした次第です.
本作は登場人物の名前が皆似ていて(もとい,同じで)通読しにくいという声をよく聞きます.「一族の家系図が載っているから…大丈夫!」とドヤ顔で友人や家族に勧めていた私ですが,このたび新潮社が公開した読み解き支援キット(池澤夏樹氏による登場人物の識別子とともにエピソードを記載した資料)を読み,複数の登場人物を混同していたことに今更ながら気づきました.ただ,作者が意図的に人物の同一化を描く箇所も多く,むしろこれら人物の混然一体とした融合をフリーな感覚で楽しむのも,本作の醍醐味の一つである気がしています.
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