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はじめに
障害者就労の支援には先天性障害と中途障害とでかかわり方の違いがあるが,一般の医療関係者が関与することが多いのは後者であり,最近では「治療と仕事の両立支援」として話題となることも多い.病気や怪我は心身のみならず,経済的,社会的にもさまざまな不都合をもたらす.それでも入院中は多職種からなる医療チームに囲まれて,多くの説明とサポートを繰り返し受けるので実感が薄い.しかし,退院したとたんにチームの存在はなくなり,患者や家族は具体的な困りごとに直面することとなる.そもそも急性期医療機関における医療者にとっては,診断と治療こそが最重要で就労支援には馴染みが薄い.患者もまた具体的な予後が見通せないなかで,不安な気持ちに流されて不要な退職を選択しているケースも多い.
2016年に厚生労働省から「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」が発表され,何度か改訂されている1).実際に両立支援に携わってみると,診断がついた段階からさまざまな支援が必要であることに気づく.大きく分けて,休業時および休業中の支援,復職に関する支援,復職後の仕事との両立のための支援,退職後の新規の就労支援,障害雇用の模索などがあり,加えて心理的サポートも重要である.厚生労働省のウェブサイト「治療と仕事の両立支援ナビ」(https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/)には,ガイドラインをはじめ関係する多くの有用な情報が収載されているので参考にしていただきたい.
しかしながら,原則として労働契約はあくまで労働者と使用者の間で成立しており,就労の可否の最終的な決定者は使用者である.医療者には,労働者本人および職場に対して安全に働き続けられる情報提供を行い,双方が理解しあえるための支援が求められている.また,医療側の支援だけでは完結できない場合のセーフティーネットも知っておきたいところである.
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