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はじめに
電動車椅子は「敗者の乗り物」か,今川忠男(元 旭川児童院副院長)はしばしば講演の中でこのような問いを投げかけていた.これは,小児理学療法の最終目標が長年,歩行であるかのような神話から生まれてきていることに他ならない.そのため理学療法士の多くは,歩行というゴールに向かって運動発達の改善に努めてきた.しかし,今世紀に入り世界保健機関(World Health Organization:WHO)が国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disabilities and Health:ICF)という新たな概念に変化するなか,2011年にはRosenbaumとGorterの論文「The ‘F-words’ in childhood disability:I swear this is how we should think!」1)が投稿され,その後の小児リハビリテーションに多大な影響を及ぼした.
ところが,電動車椅子の給付対象となるとその安全性に鑑み一定の認知面が発達するであろう小学校低学年に加えて交通ルールが理解できるという大きな壁が立ちはだかる.これは大人の指示に従えるなど電動車椅子の位置付けが目的地までの移動のための道具としてのみ支給されてきた.そのため,こどもたちが環境探索をする機会が奪われてきた.また給付される自治体が異なると同程度の障害(操作技能)であっても支給決定2)がされない場合もある.
今回,自らの意思で動くことが,① 発達に及ぼす影響,② 日本における小児電動車椅子の歴史,③ Kids Loco Projectが開発した小児電動移動機器,④ 欧米での現状,⑤ 購入可能な電動車椅子を紹介する.
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