Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
我が国の電動車椅子の歴史は,欧米にくらべると大変浅く,昭和40年代はじめにアメリカのエべレスト&ジエニングス社の電動車椅子が輸入され使用されたのが初めである.しかし価格や使用環境の問題もあり,あまり普及しなかった.国産電動車椅子の第一号は,八重州リハビリ㈱のSY-55の手動車いすにバッテリーと駆動部分をつけただけの,いわゆる簡易型電動車椅子で,昭和43年8月に販売開始をみている.その後昭和45年~46年までは,国産製品は簡易型電動車掎子が中心であったが,やはり価格や使用環境に問題があり,普及はきわめてわずかであった.その後昭和47年以降,各地で本格的な電動車椅子の研究,開発が盛んに行われる様になった.昭和48年7月に第一回朝日新聞厚生文化事業団の試乗会が開催されるに至り,ようやく厚生省も実用普及化へ腰をあげはじめ,在宅重度障害者の日常生活の利便を図るために,昭和50年4月1日から「動力付車いす給付事業要領」が定められ,電動車椅子の給付がはじまり,また時期を同じくして昭和50年3月より労働福祉事業団の電動車椅子供給も開始されるようになり,さらに昭和54年4月1日から身体障害者福祉法の補装具に加えられた事によって,ようやく電動車椅子は,障害者の生活活動圏拡大を推し進める福祉機器として一つの確固たる位置を得るに至っている.
普及の状態をみると,最近4~5年の間に急速に増加してきた段階である.そのために電動車掎子に対する認織は,まだまだ機械そのものに偏る傾向にあり,その面での関心が拡がる一方である.使用する側の障害者の評価,操作方法とその指導方法や,使用環境等への関心や取りくみが著しく遅れているため,電動車椅子と障害者の間に大きなギャップが生じているように思われる.このギャップをできるかぎり縮める事が電動車椅子の有効性を最大限に発揮させることになり,ひいては,電動車椅子によって障害者の日常生活の利便と生活圏の拡大につながると考える.
現在の電動車椅子に関する種々の問題点と,電動車椅子の種々の機種について述べたいと思う.
Copyright © 1983, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.