Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
太宰治の『人間失格』—性的虐待告発の書
高橋 正雄
1
1筑波大学
pp.1372
発行日 2023年12月10日
Published Date 2023/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552203005
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昭和23年に発表された太宰治の『人間失格』の主人公・大庭葉蔵の心理の一つの特徴は,人間を恐ろしいものだと思っていることである.
例えば,「自分は,人間を極度に恐れていながら,それでいて,人間を,どうしても思い切れなかった」,「自分は子供のころから,自分の家族の者たちに対してさえ,彼らがどんなに苦しく,またどんな事を考えて生きているのか,まるでちっとも見当つかず,ただおそろしく,その気まずさに堪える事が出来ず,既に道化の上手になっていました」などとあるように,葉蔵は対人関係において常に恐怖を感じながら生きている.
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