Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
太宰治の『パンドラの匣』—結核と統合失調症
高橋 正雄
1
1筑波大学人間系
pp.254
発行日 2016年3月10日
Published Date 2016/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200543
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昭和21年に発表された太宰治の『パンドラの匣』(新潮社)には,当時は不治の病だった結核のために在宅療養を余儀なくされている青年の姿が描かれているが,そこには,地域の中で生きる今日の精神障害者の心情を彷彿とさせるものがある.
主人公の青年は,中学卒業と同時に高熱を発して肺炎になり,3か月寝込んだために,高等学校の受験も断念しなければならなかった.その後この主人公は,どうやら歩けるようになったものの,微熱が続き,医者から肋膜の疑いがあると言われて,家でぶらぶら遊んで暮らしているうちに,上級学校に行く気も失せてしまった.それならどうすると言われても,目の前が真っ暗で,家でただ遊んでいるのも両親に申し訳なく,体裁の悪いことこのうえない.
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