連載 認知症者・家族をさまざまな観点や立場から支えるコミュニケーションスキル・第3回
認知症ケアにおけるバリデーション—リハビリテーション場面での活用
古川 信之
1
,
稲谷 ふみ枝
2
Nobuyuki Furukawa
1
,
Fumie Inatani
2
1公益社団法人福岡医療団千鳥橋病院
2久留米大学大学院心理学研究科
キーワード:
バリデーション
,
認知症高齢者
,
コミュニケーション
,
共感
Keyword:
バリデーション
,
認知症高齢者
,
コミュニケーション
,
共感
pp.1241-1246
発行日 2023年11月10日
Published Date 2023/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202980
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はじめに
本稿では,バリデーション法を基本的理念とテクニックから解説し,具体的な事例を挙げて,バリデーションがリハビリテーション場面において認知症当事者とご家族のサポートにどう役立つかを述べる.
認知症当事者とのリハビリテーションにおいて,コミュニケーションを通して信頼関係を築くことは重要な課題の1つである.認知症高齢者には,普段通りのコミュニケーションでは難しいことがある.
筆者の一人はバリデーションを学ぶ前に「家に帰りたい」と言う認知症の高齢者に対し「今は病院で治療中ですから,リハビリを頑張りましょう」と説明し,相手を興奮させてしまったことがあった.自分では丁寧に説明しているつもりだったが,「もういい! あんたじゃ話にならん!」とその方の興奮は強くなるばかりであった.「丁寧に接するだけでは足りないのかもしれない」と考え,さまざまなかかわり方を模索する中でバリデーションに出合い,本格的に学び始めた.今ではバリデーションを実践することで,こういった高齢者の言動の背景にある感情により深く共感できることが多くなり,認知症高齢者へのリハビリテーションを行う際に,より本人の意向に沿ったコミュニケーションの取り方を実践できるようになったと感じている.
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