特集 痴呆ケアについて知っておきたいこと
バリデーションへの誘い
篠崎 人理
1
,
高橋 誠一
2
1きのこエスポアール病院・きのこ老人保健施設
2東北福祉大学総合福祉学部
pp.368-373
発行日 2002年5月15日
Published Date 2002/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901488
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はじめに
「痴呆」から「痴呆ケア」へ
かつて痴呆は治らない病気であるということが一般に広く理解されるようになると,「病気だから仕方がない」と諦める家族や,治らない病気なので望みも希望もなくしてしまう家族など,痴呆に対してネガティブな反応が普通でした。実は,現在でもそういう家族はたくさんいます。また,施設の職員も,痴呆のお年寄りには食事,入浴,排泄介助以外にできるケアはほとんどないと考えがちでした。特に,俗に言う「問題行動」も単なる周辺症状として理解され,職員にとってやっかいな問題であっても,痴呆のお年寄りが自分では解決できない問題を抱えていると理解されませんでした。このような状況では,「痴呆」のことを知っている人がいても,「痴呆介護」のことはよくわからないというのが普通でした。
しかし,「痴呆」というレッテルにとらわれて痴呆のお年寄りと自分の違いばかりを考えるのではなく,痴呆があっても人として共通性があり,お互いの違いも個性の差のように受け止め,家族のように,あるいは旧知の知り合いのように,痴呆のお年寄りと接することのできる人もいました。その人のように接することで,痴呆のお年寄りが落ち着き,痴呆のようには見えなくなることがありました。このような人は,たとえ「痴呆」の知識がなくても,「痴呆介護」をよく知っている人であると言っていいのではないかと思います。
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