Japanese
English
特集 障害児の成人移行支援の課題とトランジション
神経筋疾患児の成人移行支援
Supporting transition to adult care for children with neuromuscular diseases
尾方 克久
1
Katsuhisa Ogata
1
1国立病院機構東埼玉病院神経内科
1Department of Neurology, National Hospital Organization Higashisaitama Hospital
キーワード:
成人移行支援
,
小児期発症遺伝性神経筋疾患
,
自律・自立
,
病態修飾療法
Keyword:
成人移行支援
,
小児期発症遺伝性神経筋疾患
,
自律・自立
,
病態修飾療法
pp.1177-1184
発行日 2023年11月10日
Published Date 2023/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202971
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
診断・治療技術の進歩や,社会基盤の整備発展に伴って,従来は成人を迎えることが困難であった小児期発症疾患の生命予後や生活が向上するとともに,小児期から成人期に至る生涯を支える医療・福祉提供体制が求められるようになった1).日本小児科学会から2014年に出された移行期医療に関する提言2)では,病態・合併症の年齢変化や身体的・人格的成熟に即して適切な医療を受けられることがめざされ,小児科から成人診療科への移行に複数の類型があることが提示された.次いで,2022年の提言3)では,小児期発症慢性疾患患者が社会においてその人なりに自律・自立した成人となることを目的として「医療」,「健康」,「福祉」といった広い視点で提供される「成人移行支援」という概念が提唱され,多面的で包括的な患者中心の支援プロセスが提起された.
神経筋疾患,とりわけ筋ジストロフィーや脊髄性筋萎縮症といった遺伝性神経筋疾患は,かつて「治療法がない病気」とされ,成人を迎えることが困難な病型が多かった.病態解明と診断技術の進歩による早期の的確な診断と,人工呼吸療法や心筋保護療法をはじめとする集学的ケアの向上は,神経筋疾患患者の生命予後改善をもたらした.近年開発が相次いでいる病態修飾療法は,患者の人生と生活をさらに変えるものと予想される.
本稿では,主に遺伝性神経筋疾患の医学的側面に着目し,その成人移行支援につき述べる.
なお,筆者は神経内科専門医であり,本稿では主に成人診療科の立場から論じることをご了承願いたい.
Copyright © 2023, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.