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はじめに
脳性麻痺の病態は麻痺と異常筋緊張が混在しており,特に異常筋緊張は痙縮,ジストニア,アテトーゼ,失調に加えて先に挙げた異常筋緊張が混在した状態も認める.重症度が高くなるほどさまざまな異常筋緊張が混在していることが多い.麻痺の程度も症例によって違い,症例ごとに多様な状態を呈する.麻痺と異常筋緊張は随意性の低下や筋短縮の要因となり,姿勢保持や協調運動,バランスに影響する.成長に伴い二次障害として筋短縮・関節拘縮や関節変形が起こり,麻痺性股関節脱臼や麻痺性側弯に至ることも少なくない.成人まで継続して経過観察する必要性があり,筋短縮や関節拘縮を予防するために異常筋緊張亢進をコントロールするアプローチは重要である.
現在の医療レベルでは麻痺の治療方法は存在しないが,近年ではさまざまな筋緊張軽減治療を選択できるようになってきた.特に痙縮治療に関してはボツリヌス療法(botulinum toxin type-A:BONT-A療法),選択的後根切断術(selective dorsal rhizotomy;SDR),バクロフェン髄注(intrathecal baclofen therapy;ITB)療法がある.各治療法の作用部位は異なり(図1)1),それぞれの治療法の作用機序を理解することで,症例ごとに多様な状態を呈する脳性麻痺への適応を熟慮し,症例によっては併用療法も考慮する必要がある2).
痙縮を管理するうえで子供と大人との最大の違いは成長である.小児の脳性麻痺では骨と筋肉の成長速度の違いを考慮する必要がある.痙縮は骨の成長より筋肉の成長に大きく影響する.つまり,痙縮は筋短縮の要因となるため痙縮を軽減することで骨と筋肉の成長を整える意味でも,痙縮治療は筋短縮が起きる前に考慮する必要がある.
脳性麻痺の運動発達の自然経過報告では粗大運動能力分類システム(Gross Motor Function Classification System;GMFCS)レベル1〜5のいずれのレベルでも7〜10歳ごろにピークを迎え,特にGMFCSレベル3〜5では成長とともに筋短縮と関節拘縮が起きて,さらには股関節脱臼や麻痺性側弯を合併して緩やかに運動機能は低下する(図2)3).そのため痙縮治療は筋短縮や関節拘縮が起きる前に,痙縮軽減によってリハビリテーションで随意性(分離運動)の促通と神経筋の再教育を行う目的でできるだけ早期に行う必要がある.つまり,痙縮治療は各痙縮治療を行うことができる適切な時期に行う必要がある.薬物療法は2歳前から,ボツリヌス治療は2歳から保険適用であり,2歳から考慮される.選択的後根切断術は3歳前から考慮し,ITB療法はポンプが埋め込める体格で3歳ごろから考慮される4).
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