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本誌をご覧の方であればご存じの通り,「リハビリテーション医学は,さまざまな疾患・外傷・病態により生じた機能障害の回復を促しつつ,結果として残存した障害を克服しながら,人々の活動を育む医学である」,と日本リハビリテーション医学会が発表しています.今でこそ,リハビリテーション医学をこのように明確に説明することができますが,私がリハビリテーション科医師になりたての十数年前にはリハビリテーション科医師の専門性について思い悩むことがしばしばありました.
私がリハビリテーション科医師になって2年目のころ,同じくリハビリテーション科医師の先輩に次のような質問をされたことがありました.「リハビリテーション科のことをあまり知らない人にリハビリテーション科の専門性を簡単に説明できないものか.リハビリテーション科以外の診療科は,特定の臓器を診療の対象としているため,専門性がわかりやすい.例えば,脳神経外科や神経内科(当時の名称)は脳や神経を詳細に診て,呼吸器内科は肺,循環器内科は心臓を詳細に診る,では強いて言うならばリハビリテーション科は,何の臓器を詳細に診ている科であろうか.」というものでした.これに対してリハビリテーション科がもっともよく診ている臓器は「筋肉」であろうと私は答えました.この回答を出したのには私なりに理由があり,リハビリテーション科は頻繁に「筋肉」の出力について筋力低下や麻痺として評価を行いますし,神経伝導検査や筋電図などの電気生理学的検査で「筋肉」の状態を評価します.「筋肉」の緊張状態を評価し治療を行うのもリハビリテーション科が得意としており,痙縮に対するボツリヌス療法はリハビリテーション科医師によってよく施行されています.さらに当時,概念が固まりつつあったサルコペニアを最もよく診ていくのもリハビリテーション科であるべきであろうという思いもありました.
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