巻頭言
リハビリテーション医学における「専門性」
村岡 幹夫
1
1新潟市民病院リハビリテーション科
pp.241
発行日 1990年4月10日
Published Date 1990/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552106244
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現代医学は高度医療を供給すべく,数々の専門分野を生み出しながら成長,発展してきた.しかし一方では,専門分化の縦割医療が,過剰診療,重複投薬など,医療費高騰化の一因をなしてきたことも否めない.従来,専門各科に含まれていたプライマリ・ケアの重要性が強調される中,アメリカではこれを専門とするFamily Practiceが現代医学の申し子として誕生してきたが,何とも皮肉な話である.我が国のプライマリ・ケアは,主として内科あるいは一般外科の延長線上で開業医の先生方によって支えられてきたが,Family Practiceのプライマリ・ケアは専門分野を積極的に統合する医療であり,その守備範囲は広く,かつ臨床性に富んでいる.専門分化への反省を踏まえた統合医療への流れは,Family Practiceに限らず,今後,救急医学,老年医学など新たな「統合医学科」の誕生,定着を促すものと思われる.
ふり返れば,リハビリテーション医学の歴史は,まさにFamily Practiceに共通するものがある.リハビリテーション医学は障害者のプライマリ・ケア,さらには全人間的復権を目指すべく既存各科より分化統合してきたと言えるからである.専門各科を渡り歩き,多くの主治医を得て混乱していた障害者にとって,疾病,障害の治療,管理はもちろん,治癒固定後の方針をも計画立案する専門なき専門科の誕生は,限りない朗報であったに違いない.老人医療が注目されてきた昨今,疾病および障害の両面より統合的医療を展開するリハビリテーション医学の専門なき「専門性」が広く理解される日も近いと期待してやまない.
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