特集 リハビリテーション医療の問題点
リハビリテーション医学の専門性を考える
岩谷 力
1
1日本大学整形外科・リハビリテーション科
pp.601
発行日 1988年8月10日
Published Date 1988/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105877
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医療の高度化のためには専門分化は不可欠かつ正しい方向で近い将来この専門分化の方向が軌道修正されることはないだろう.しかし専門分化による弊害も生じている.医学が器官,臓器,手段中心の専門分化をすすめた結果,疾病の全体像,患者の全体像の把握はなおざりにされ,患者側の不利益が顕在化している.医者側もこの欠点を是正する努力をしている.
整形外科分野では小児整形外科,スポーツ整形外科,老人整形外科のように分化ではなく統合を志向した専門化の芽が育っている.これらの統合化のめざすところは器官,臓器,手段中心から疾病,患者中心への転換であり専門分化により得られた高度な知識,技術を用いかつ不足の部分は他の専門家と協力して疾病を診断から治療アフターケアーまで縦断的に治療しようと言うものである.この方向性は患者の要請に応えたものであろう.リハビリテーション医学は人間中心主義である.整形外科の源も人間中心主義であった.整形外科の専門志向は手術重視に走り,それを不満足に思う整形外科医も多かった.医学の進歩は死は免れるが新たな障害者の増加およびこの後遺障害の治療の要請に応えるべく,新しい分野の開拓に乗り出した人々が前出の整形外科医とともに器官,臓器,手段中心主義にとらわれない人間中心の医療をめざしてリハビリテーションの専門分化を推進したのであろう.
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