Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
高橋竹山の『自伝津軽三味線ひとり旅』—盲目の三味線奏者
高橋 正雄
1
1筑波大学人間系
pp.78
発行日 2015年1月10日
Published Date 2015/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200120
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盲目の津軽三味線奏者として名高い高橋竹山(1910〜1998)が昭和50年に発表した『自伝津軽三味線ひとり旅』(新書館)には,明治43年に青森県の小湊に生まれた竹山が,幼くして視覚障害者となったころの状況が描かれている.
竹山が視覚障害者になったのは,2歳になる前に罹った麻疹のためだという.麻疹に罹った竹山は,風邪をひかないよう大事にされていたが,気がつくと眼に星がかかっていた.すぐに医者には行ったものの,当時は虫垂炎を治すこともできずに死なせたような時代だったから,医師はただ眼薬を与えただけだった.結局,竹山はほとんど失明に近い状態になるが,当時麻疹で眼が見えなくなった子供は,竹山以外にもたくさんいたとして,その過酷な運命を,次のように語っている.「おらと同じ年に盲になった子供が村に5人も6人もいた.おらはまだ生きてこうしているけど,みんなもう死んでしまったじゃ.川さ落ぢで死んだのもいるし,木から落ぢで死んだのもいる」.
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