Japanese
English
研究と報告
盲目患者における幻視の1例—平衡機能障害との関連において
Ein Fall von gesichtshalluzination des Blinden
杉本 直人
1
,
鈴木 鉦一郎
1
,
宮川 健二
1
Naoto Sugimoto
1
,
Sei-ichiro Suzuki
1
,
Kenji Miyagawa
1
1岐阜大学医学部神経精神科
1Dept. of Neuropsychiat., School of Med. Gifu Univ.
pp.53-57
発行日 1969年1月15日
Published Date 1969/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201430
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Ⅰ.緒論
盲目状態において,幻視ないしは幻視様の体験のあることはAnton氏徴候を有する患者にしばしば出現する現象としてすでにかなりの報告がある。これらの症例では自己の盲目状態の否認ということと関連して,体験されている幻視像は視想起像であると結論されていることが多いようである。一般に幻視の出現機制については,脳視覚領の刺激症状であるとする説や,全体的な脳の機能状態を考えねばならぬとする説,願望などの心理的契機が考えられねばならぬとする説,さらには平衡機能との関連においても考えられるとする説など各学者の専門領域あるいは立場によつて種々の説明がなされている。
視力を失い客観的な事物はなにもみえないなどの盲目状態において体験される視覚像(幻視)は,盲目であるという条件を考えるとき,視現象,視機能に関する生理学的,解剖学的,心理学的,精神病理学的な問題に関する好個の材料であるということができる。われわれは今回下垂体腫瘍のためほとんど全盲(右眼:視力なし。左眼:明暗の弁別程度)となつた患者に,幻視が突然出現し,そのため妄想状態となつた例を経験したので,その症状を報告し,同時に身体的所見ことに平衡機能との関連においてその症状を考察してみたい。
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