Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「海辺の彼女たち」—外国人技能実習生の境遇に光を当てる
二通 諭
1,2
1札幌学院大学
2札幌大谷大学
pp.1529
発行日 2022年12月10日
Published Date 2022/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202708
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「海辺の彼女たち」(監督/藤元明緒)は,2021年度(第26回)新藤兼人賞金賞を受賞.同賞は,独立プロ53社によって組織される日本映画製作者協会に所属するプロデューサーが,その年度で最も優れた新人監督を選出したもの.加えて,「第3回大島渚賞」(2022年3月10日)も受賞.前作の「僕の帰る場所」も,2017年・第30回東京国際映画祭「アジアの未来」部門でグランプリにあたる作品賞と,監督賞にあたる「国際交流基金アジアセンター特別賞」を受賞.日本人監督初のダブル受賞者である.
「僕の帰る場所」は,日本で暮らす難民申請中のミャンマー人の家族を描いたもの.父親の申請が受理されないことから,両親はミャンマーへの帰国という道を選択する.日本に慣れ親しみ,「ビルマ系日本人」と化した子供は,日本に帰りたいとの思いを募らせる.カメラはそんな矛盾の集中点としての子供たちを凝視する.演技経験のない面々を起用しているせいなのか,藤元の演出力によるものなのか,劇映画というよりもドキュメンタリーを観ているかのような感覚になる.これこそ,藤元の作風であり,真骨頂.
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