Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ヘロドトスの『ホメロス伝』―盲目の詩人の病跡
高橋 正雄
1
1筑波大学障害科学系
pp.86
発行日 2010年1月10日
Published Date 2010/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101690
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紀元前5世紀にヘロドトスによって書かれたと伝えられる『ホメロス伝』(松平千秋訳,『イリアス(下)』岩波文庫)は,盲目の詩人ホメロスの人生を描いたという点において,世界で最も古い病跡学的な文献の一つである.
『ホメロス伝』によれば,イオニアの古都キュメに,ギリシアから移民してきたメラノポスという貧しい男がいた.彼がオミュレスという男の娘と結婚して生まれたのがクレテイスという娘である.両親の死後,クレテイスはある男と秘かに情を通じて身重になってしまったためにスミュルナという町に移り,そこでホメロスを産んだ.その後,手仕事で自分と子どもの身を養うことになったクレテイスは,あちこちから仕事をもらい,力の及ぶ限りのことをして息子を育てた.
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