Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
玉置浩二の『田園』と『JUNK LAND』—ピア・カウンセリング的な歌
高橋 正雄
1
1筑波大学
pp.314
発行日 2022年3月10日
Published Date 2022/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202458
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1996年に発表された玉置浩二の代表作『田園』(玉置浩二・須藤晃作詞,玉置浩二作曲)は,この世に生きづらさや不適合感を感じている人々へのピア(仲間)・カウンセリング的な応援歌である.
そもそも『田園』が唄っているのは,「アブラにまみれて黙り込んだあいつ」,「仕事ほっぽらかしてほおづえつくあの娘」,「そろばんはじいて頭かかえてた君」,「道をはずれちゃってとほうに暮れるあの娘」といった日々の生活に悩みを抱えている若者である.そんな若者に,玉置は「僕がいるんだ」,「愛はここにある」と寄り添う気持ちを示して,「カッコつけてないで」,「やれるもんだけで」,「毎日何かを頑張っていりゃ」,「生きていくんだそれでいいんだ」と,生きるうえでの具体的な指針を助言しているが,そう助言する玉置自身,冒頭で「石コロけとばし夕陽に泣いた僕」と語るような自ら悩みや問題を抱えた存在なのである.玉置は,「何もできないで」,「誰も救えないで」,「悲しみひとつもいやせないで」と,己の無力を自覚しながら,それでも「ビルに飲み込まれ」,「街にはじかれて」など,自分と同じような状況に置かれた若者たちの力になろうとしているのである.
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