Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「グレタ ひとりぼっちの挑戦」—アスペルガー症候群に伏在する力が世界を変える
二通 諭
1,2
1札幌学院大学
2札幌大谷大学
pp.315
発行日 2022年3月10日
Published Date 2022/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202459
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2018年8月20日,スウェーデンの15歳の少女,グレタ・トゥーンベリは,「選挙当日まで,気候のための学校ストライキをします」と記したチラシを用意し,ストックホルムの国会議事堂前に座り込んだ.2日目には,隣に座る子供が現れ,最終日には約千人が座り込んだ.ここから学校ストライキ運動が世界に広がり,2019年9月20日(金)のグローバル気候マーチには,世界185か国以上,400万人が参加した.これに驚愕したのか,同年10月にプーチン,同年12月にトランプがグレタに噛みつく.かくして,「世界の両巨頭プーチン・トランプvs女子高校生グレタ」という,歴史の1頁に刻まれること必定の対決の図が世界を駆け巡った.果たしてグレタとは,いかなる人物なのか.ドキュメンタリー「グレタ ひとりぼっちの挑戦」(監督/ネイサン・グロスマン)が,その素顔に迫る.
グレタは,摂食障害,場面緘黙症,不登校を経験し,アスペルガー症候群であると公言している.となれば,際立った能力や,独特の感じ方や思考パターンの持ち主であることは想像に難くない.父親によれば,グレタは気候問題に関する文献を読破するだけではなく,その内容をすべて記憶しているとのこと.グレタの頭脳には,学ぶことができた科学的知見がスッポリ入っており,それゆえ,誰に対しても,どんな場でも物怖じすることなく,的確な言葉を繰り出す.「私のような自閉症スペクトラムに属する者にとって,ほとんどすべてのことは白か黒かです」1)と語るグレタにとって,地球温暖化の危機は,白か黒かの問題.アスペルガー症候群特有の二分法的思考が,世界を救う運動の力になったのだ.
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