連載 スクリーンに見るユースカルチャー・8
学校と田園
小池 高史
1
1横浜国立大学大学院教育学研究科
pp.241
発行日 2007年3月25日
Published Date 2007/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663100638
- 有料閲覧
- 文献概要
公開時に観て以来,今回5年ぶりに観たのだが,その内容をかなり覚えていたことに自分で驚いた。私は,観た映画や読んだ小説の筋を結構忘れてしまうほうだから,というのが,その理由の一つ。それほど,この映画は当時18歳だった自分にとって印象に残ったのだと思う。また,私は好きな映画は何度もくり返して観るほうなのだが,それほど印象深かったこの作品を,5年間一度も観なかったのである。それが,「驚いた」ことのもう一つの理由だ。私はこの映画を何らかの理由で避けていたのだろうか。それとも,何度も観る必要がないほど,一度観た経験が大きかったのだろうか。
映画の内容は,残酷なものである。死を身近なものとして経験することで,社会に合わせることをやめた少年。彼に虐げられる周りの少年たち。最後に彼を殺してしまう主人公。残酷な現実が生じる原因の一つにはやはり,学校が出入り自由な場所でないということがある。物語の舞台となる,田園が特徴的な地方都市という場所は,その美しさと閉塞感という点で,学校という場所に似ている。学校に通いながら,困難な状況で生きる中学生たちの姿が切実に描かれている。
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.